「もう家にいるの? 久しぶりに会わない?」
携帯のメールがそう告げる。
兄さんから約3ヶ月ぶりのお誘い。

返信メールに何て書くのか、その方法は何通りでもあった。
返信の内容でその後どうなるのかほぼ察しがついた。
私だってそんなに子供じゃないし。
だから返信メールに何を書くかはすぐ決まった。

「じゃ…うち来る?」

暫くすると、兄さんはうちにやって来た。
以前より肌が小麦色に焼けていて、2人が夏の間全く会っていなかったことを実感させる。
少し痩せた、かな?

まるで何も無かった様に、私達はあたり障りのない会話を続けた。
仕事のこと、共通の友人のこと、最近気になっていること、自分のこと。
3ヶ月前の告白メールなんて、お互い記憶にも残っていない。
…まるでそんな感じだった。

「酒でも飲まないか?」

兄さんは、私が2ヶ月遅れで手渡した誕生日プレゼントのラムの瓶を少し上に持ち上げた。

「いいね。グラス持ってくる。」

どのくらい飲んだんだろう。
どれだけ飲めば酔えるんだろう?
私は注がれるがままに褐色の液体の入ったグラスを口元に運ぶ。
でも、全然酔えない。
この後に確実に起こるだろう出来事が、私の意識を現実から引き離してくれない。

「今夜泊まってもいいかな?」

その台詞はあまりにも唐突で、でも驚くことは無くて。
2人は当然のようにキスをしていた。
お互いの洋服を脱がせ合い、ベッドの上に倒れ込む。

兄さんの気持ちは解っている。
今夜、今ここで私を抱いたとしても、それは愛しているからじゃない。
兄さんには私と付き合う気は全然ない。
自分の兄弟よりも年上の私のことを彼女という対象としては見ることが出来ない。

だから、私を抱いているのでしょう?

抱かれながら泣いている私に気が付かないのでしょう?

それでも構わない。1度で構わない。
私はあなたに抱かれたかった。
あなたを全身で感じたかった。

「キミの想いには応えられない。ごめん。」

全てが終わった後で、私を抱きしめながら耳元でささやいた。
じゃぁどうして放っておかなかったの?
何故今ここにいるの?
どういうつもりで私を抱いたの?
…責める言葉はいくらでもあった。

「わかってる。」

そう。
解ってて、今夜あなたをここに呼んだんだから。

それだけでいいじゃない?


純粋に私はあなたが欲しかった。
恋愛がかなわぬ夢だと知っていたから。

ただ、それだけ。

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